Portfolio

短歌、時々雑文

丸の内ワックスでつやめく床に五本指の足跡がある

ジンジャーのシロップのような文字色の万年筆を失くす夢を見た

毒蛇の飼育員が言う毒蛇は生まれたときから毒蛇である

久方の空中庭園の最端は正午ちょうどのオアシスの果て

昨日と今日ヨーグルトの蓋を開けたとき飛沫が飛んだ昨日と今日

腰痛も武器文字祈り芸術も二足歩行がもたらしたもの

人間の自死の道連れロボットのとうめいな頭脳とうめいな心

千円で飲料を買い釣銭が百円八枚十円七枚

「美しい脳」と言われし人を知り「きれいな脳」の我、嫉妬する

CTで輪切りにされし我が頭部「きれいな脳」と言われて嬉し

頭痛にて眠る間に故障したアンドロイドになる夢を見た

聴くたびに知らない映像浮かびくるプロコフィエフという知らない音楽

ソビエトのピアノ協奏曲を聴き脳裏に映る知らない映画

クッキーを一箱食べてしまうのは心の病ではないそうです

客寄せにパチンコ店の前に立つアンドロイドを見ぬ振りをする

母親の食事の時間が帰省する度に段々早くなってる

墓参中父の命日の語呂合わせ考えたけど浮かばなかった

大掃除という習慣に逆らったつもりの元旦から掃除する

科学的に「たましいを遠くに飛ばす」古いやりかた学ぶ夢見た

夢のなかで逢った三つ子のおんなのこ ひとりがずっとここに残ってる

静電気におびえてノブをたたたたた叩いて何度も叩いて開ける

コカ・コーラの自動販売機と郵便ポスト並んで立って親子の振りで

眠りたる間の世界の私(わたくし)の存在を自覚する私(わたくし)の不在

「ぼくがかんがえたさいきょうのロボット」に通り雨過ぎ青色滲む

缶入りのチョコレートチップクッキーと抗鬱剤は同じことです

赤い実を食べれば地上に戻れぬと知ってあの子は赤い実食べた?

不摂生と小さな嘘を押し流すように飲み干す野菜ジュース

セーターが二枚ダメになったのでとっておきのを一枚買った

コントロールされないためにコピー室にコントロールキーを落としてきたの

駅前のインド料理屋の店名が変わる発音できぬ名前に